土壁(荒壁)

江戸時代末期に新潟県上越市に建てられた築170年の古民家を愛知県江南市に移築(新築)しています。
建方・屋根仕舞いに続き、土壁(荒壁)を塗りました。木の骨組みに壁が付き、徐々に完成のイメージがしやすくなりました。

今はあまり見かけなくなってしましましたが、土(砂混じり粘土)はかつて最も入手しやすい材料として、建築に利用されてきました。
また、現場に合わせて成型が自由にできたり、広く継目なしに仕上げることができるという優れた特徴があり、さらに、耐火・耐水・断熱・遮音・吸音という性能を一通り兼ね備えているため、世界各地で数千年来利用されてきました。

まずは土壁の芯になる竹小舞。
この地方では、竹小舞も左官屋の仕事です。

最初に、柱に通された貫の間に親竹(間渡し竹)を取り付けます。
この親竹に割竹を1本ずつ麻縄でしばり、格子状に編みます。

手間のかかる仕事で、様々な流儀があります。
地域によって、職人によって、使う材料も編み方も千差万別で、それぞれに理由があり、ウンチクを聞くと面白いです。
左官屋の経験と知恵が結集されています。

この竹小舞はとても綺麗ですが、すぐに土壁(荒壁)が塗られてしまうので、壁の中に隠れてしまいます。一瞬の美です。

そして荒壁。
きれいに編んだ竹小舞に、藁スサ(細かく刻んだ藁)を混ぜた土を塗ります。
土は阿吽の呼吸で鏝板に刺されます。

最初の片面は、土が「にゅるっ」とはみ出すように・・・。

片面が終わったら、裏返し塗り。
「にゅるっ」とはみ出すことで両側の土が一体となり、そして数週間をかけて乾き、ひび割れが出ると、竹小舞を芯にした荒壁ができます。

この塗り方も、職人によって様々です。
最初に屋外側を塗る人、そうではなく屋内側を塗る人、両側を続けて塗る人、片側だけ塗って乾かしてからもう一方を塗る人。
それぞれに、もっともな理由があります。

この土壁パワーすごいんです。
屋外は湿気があってまだまだ暑いですが、中に入ると冷やっと涼しいんです。
塗ったすぐから感じることができました。
土壁が乾いた後はもっと力を発揮して、むわっとする湿気を吸い取ってくれます。

この後は、いよいよ造作に入ります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です